映画「すばらしき世界」感想:ここか、あちらか…?
映画「すばらしき世界」の作品情報
放映:2021年 / 126分 / ジャンル: 邦画
原作 / あらすじ
原作は、実在の人物(田村明義)をモデルに、13年の刑期を終え出所した男の生きかたを描いた佐木隆三の長編小説『身分帳(1990)』
西川美和は本作が初の小説原案作品となり、2015年に佐木隆三の訃報に際し身分帳の存在を知り、監督・脚本を努め映画化に至った。
下町の片隅で暮らす短気ですぐカッとなる三上は、強面の見た目に反して、優しくて真っ直ぐすぎる性格の男。しかし彼は、人生の大半を刑務所で暮らした元殺人犯だった–。
一度社会のレールを外れるも何とか再生したいと悪戦苦闘する三上に、若手テレビマンがすり寄り、ネタにしようと目論むが…。
三上の過去と今を追ううちに、逆に思いもよらないものを目撃していく–。 ©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会
予告動画
個人的感想・評価
ムショ暮らしが長すぎて「浦島太郎状態」のヤクザ上がりの枯れオジ: 三上(役所広司)が、厳しい現実に晒されながらも更生を試みる 言葉を選ばずに言えば ありがちなストーリー。
原作からの映画化とのことで、西川美和監督らしからぬ、ヒューマンドラマ風の作品と思って見ると最期にどんでん返しを食らう。
三上の人柄のせいか(←乱暴だけれど真っ直ぐでカワイらしい)、取り巻くシャバの人間が良い人ばかりで、そこそこの笑いもあり、涙もありのドタバタ劇で、中盤までは意外にも安心して見れる。
前科者に対する世間の目は厳しく、いくら刑罰を終えて出所したとは言え「人生のリスタート」を切るなんて言う事は簡単には出来ないことはいろいろな作品で見てきた。
本人だけの努力ではまず無理で、周りの人間のサポートがどれだけ必要かもしかり。
この作品での三上は、紆余曲折を経ながらも幸運にもかなり良い人たちに支えられて、社会生活に溶け込んだかに見える。
けれど、この作品の核心はこの後半からで あぁ、やっぱりこれは『西川美和』作品やったのねと唸らずにはいられない。
弱いもの虐めを許せない真っ直ぐすぎた男にとって、「自分を押し殺しながらシャバで生きる」と言う矛盾がどれほどの苦行だったのかを考えれば、三上の最期はおのずと想像出来る。
最低な自分になった日に、最高に幸せな出来事が起こった三上が選んだすばらしき世界がここじゃなかったことを心に置いておきたいと思う。
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