映画「Winny」感想:開発者の未来の為に戦った天才と弁護団
映画「Winny」の作品情報
放映:2023年 / 127分 / ジャンル: 邦画
原作 / あらすじ
脚本は監督の 松本優作と岸建太朗の共作。2004年に逮捕されたP2Pファイル共有ソフト開発者 金子勇 の冤罪事件をめぐり7年半にわたる裁判を描いた事実を元にした映画作品。
2002年、開発者・金子勇(東出昌大)は、簡単にファイルを共有できる革新的なソフト「Winny」を開発、試用版を「2ちゃんねる」に公開をする。彗星のごとく現れた「Winny」は、本人同士が直接データのやりとりができるシステムで、瞬く間にシェアを伸ばしていく。
しかし、その裏で大量の映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、ダウンロードする若者も続出、次第に社会問題へ発展していく。次々に違法コピーした者たちが逮捕されていく中、開発者の金子も著作権法違反幇助の容疑をかけられ、2004年に逮捕されてしまう。サイバー犯罪に詳しい弁護士・壇俊光(三浦貴大)は、開発者金子氏逮捕の報道を受けて、急遽弁護を引き受けることになり、弁護団を結成。裁判で警察の逮捕の不当性を主張するも、第一審では有罪判決を下されてしまう…。©2023映画「Winny」製作委員会
予告動画
個人的感想・評価
- 金子勇が革新的な技術で開発したファイル共有ソフト『Winny』によって著作物を違法コピーするユーザーが200万人に達していた2003年、京都府警によって違法アップロード常習者の一斉検挙が始まった。
- 次いで京都府警は、任意同行を求めた金子に誓約書と騙して申述調書を作成させ、それを元に著作権法違反幇助の罪で金子を逮捕した。しかし金子の逮捕劇には警察内部の不祥事を隠蔽したい思惑があり、警察の裏金作りの内部資料までもが奇しくも『Winny』によって公になる。
- 『Winny』開発に違法な意図が無いことを訴え冤罪を主張した金子側弁護団は敗訴するが、プログラム開発者の未来を守るため金子は上告を選び7年の歳月をかけ最高裁まで持ち込み、遂に無罪を勝ち取るのだった。
Winny(ウィニー)とは、2002年に開発されたPeer to Peer(P2P)技術を応用したファイル共有ソフト、電子掲示板構築ソフト。
約20年前。まだ、スマホなんてものはもちろん無いし、パソコンもオタクか仕事でしか使ってないような時代だった。
当然音楽のサブスクや、漫画や動画の配信サービスなんてものも無かったし、ネットとパソコンだけで欲しいファイルが手に入るというのは正に神的ソフトで目的は様々にしても(私を含め)多くのネットユーザーが利用したと思う。
直に著作権法違反が問題になってメディアを騒がせた『Winny(ウィーニー)』や、その後に派生したいろいろなファイル共有ソフトも、不正や違法という認識の方が広がってだんだん廃れて、今となっては気づけばそんなのあったなぁという記憶…。
この作品は、『Winny』というタイトルではあれど決してソフト開発ストーリーなどではなく、その後に起こった『Winny開発』を巡る裁判劇がメインになっている。
作中の台詞にもあって、こういう場合によく例えに上げられる、包丁を使って刺殺事件が起きた時に包丁を作った人間が処罰されるのか?という点。
もちろん、そうなる理由がないというのは誰でも理解できる。けれどこの裁判の難しいところは、Winnyの開発時に違法な利用方法を想定した意図があったのか?無かったのか?という点を立証しなければならないというところだと思う。
『Winny』が金子氏が想定していなかった利用方法で瞬く間に広がっていったのか、それともアングラユーザーを喜ばせたいと言う気持ちが多少なりともあったのか…?それはもぅ本人にしか分からない事。
ましてやその判決を下す裁判官らが、ITには程遠いアナログ人材が多い時代なら尚の事かと思う。そういう訳で、最初の裁判では敗訴してしまったのもあの時代ならしょうがないことかと思う。
でもその後に、プログラマーとしての時間=金子氏にとっては生きる術とも言う時間をあっけらかんと捨て上告を選び、開発者の未来の為に7年間も戦った金子氏は、純粋に人を喜ばせたいと言う気持ちでコードを打っていた生粋のプログラマーだったんだろうなと思える。
才能を持つものが世に認められるには、孤高の天才では駄目で、マネジメントする人間がいなければいけないんだなと思った次第。
まさかその金子氏が勝訴後に間もなくして急逝されていたと言うのも、あまりにも悲しい事実だった。
そんな金子氏をアングラ系ソフトのヤバい天才としてでは無く、敬意を持って描いていた事にとても好感が持てる作品だった。
金子氏は天才肌によくある、好きなこと以外には激しく疎く純朴なまま歳を重ねた世間とのズレがある人物だったけれど、それを上回る愛らしい性格の持ち主だったであろうことがとてもよく表現されていた。
それにしても、この金子氏を演じた東出昌大は素晴らしかった。実年齢的には『Winny』が世間を騒がせた事をあまり知らない世代かと思うけれど、金子氏の人物像をものすごく勉強したのではないかと思う。
エンディングには実際の金子氏の映像が差し込まれているのだけれど、役作りのために18キロ増量して寄せた事も相まって、東出昌大が金子氏そのものに見えた。
個人的に東出昌大は(元妻さんより)良い俳優やと思うので、必要以上に禊を求める風潮はいい加減に無くなってもいいんじゃないかと思う。
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