ドラマ「アナウンサーたちの戦争」感想:黒歴史を映像化
ドラマ「アナウンサーたちの戦争」の作品情報
放映:2023年 / 90分 / ジャンル: 国内ドラマ
原作 / あらすじ
太平洋戦争では、日本軍の戦いを支えたラジオ放送による「電波戦」。その役割を担った日本放送協会(NHK)とそのアナウンサーたちの活動と葛藤を、事実を元にNHKが自らがNHKスペシャルにてドラマ化。
国民にとって太平洋戦争はラジオの開戦ニュースで始まり玉音放送で終わった。奇しくも両方に関わったのが 天才と呼ばれた和田信賢アナ(森田剛)と新進気鋭の館野守男アナ(高良健吾)。
1941年12 月8 日、大本営からの開戦の第一報を和田が受け、それを館野が力強く読み、国民を熱狂させた。
以後、和田も館野も緒戦の勝利を力強く伝え続け国民の戦意を高揚させた。同僚アナたちは南方占領地に開設した放送局に次々と赴任し、現地の日本化を進めた。
和田の恩人・米良忠麿(安田顕)も“電波戦士”として前線のマニラ放送局に派遣される。一方、新人女性アナウンサーの実枝子(橋本愛)は、雄々しい放送を求める軍や情報局の圧力で活躍の場を奪われる。
やがて戦況悪化のなか、大本営発表を疑問視し始めた和田と「国家の宣伝者」を自認する館野は伝え方をめぐって激しく衝突する。出陣学徒を勇ましく送り出す実況を任され、ただ苦悩する和田を、妻となった実枝子が叱咤し目覚めさせる。
そして館野もインパール作戦の最前線に派遣され戦争の現実を自ら知ることになる。戦争末期、マニラでは最後の放送を終えた米良に米軍機が迫る。そして戦争終結に向け動きだした和田たちにも銃口が迫る。
個人的感想・評価
- 「表現の自由」が制限されていた時代に、国策推進のために設立された同盟通信社。アナウンサーたちは提供された原稿をラジオから届けていた。
- そんな時代に、自ら取材をし見聞きした事実を基に自らの言葉で放送を行っていた和田信賢(森田)は、人気が高く天才アナウンサーと呼ばれていた。
- しかし、太平洋戦争の勃発によりアナウンサー達は「電波戦」の命を受け、ラジオ放送により日本軍の戦いを支えることになる・・
国民の戦意高揚や国威発揚を図り、偽情報で敵国を混乱させる情報戦が当時の電波メディアの主流だったラジオを使われていたのは容易く想像できる。
けれど、国営放送とは言え軍隊ではないアナウンサーがその重役を担わされていたということは知らなかった。
特に、偽ニュースで敵軍を撹乱する為に、アナウンサーが戦地に軍事要員として派遣され謀略放送を実施していたことや、多くのアナウンサーが現地で命を落としていたことはショックだった。
日本の戦況が劣勢になっていくのと反比例するように、国民の戦意をあおる雄叫び調アナウンスになっていくのは恐ろしくて悲しい。
長く戦争が起こっていない日本で「お国のため」という言葉を総国民が心にした時代があったことを絶対に忘れては行けないなと思う。
現代の日本で、国が国民に偽情報を流すなんてありえないと思うのは安易な発想で、真実だと聞かされていることが本当は真実じゃないという可能性だって無きにしもあらずだということを肝に銘じたい。
主演の森田剛は、しばらく舞台で活躍していたと思うけれど、映像作品でも最近よく目にすることが多くなった。
今作での意外なキャスティングでは、映画 前科者やドラマ インフォーマとも全く異なる人物像を演じていたけれど、若者たちが命を落とす戦況に、疑問を感じ強く葛藤する様子は素晴らしかった。
この作品の注目すべき点としては、そのラジオによる情報戦を担った日本放送協会、つまりNHKが自らの黒歴史を事実を元に忠実に再現したドラマであるというところを称えたいと思う。
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