ドラマ「神の子はつぶやく」感想:信じない私も…
ドラマ「宗教2世 神の子はつぶやく」の作品情報
放映:2023年 / 90分 / ジャンル: 国内ドラマ
原作 / あらすじ
NHKスペシャル放送ドラマ(2023年11月) 当事者の実体験を元に、母が宗教団体に入ったことで家族の関係が変わっていく様を宗教2世と呼ばれる娘の視点で描いたオリジナルドラマ。
「母はどうして神様を信じたのか?」ある宗教団体に入ったことで1つの家族が形を変えていく…。
木下遥(河合優実)は、熱心な信者である母・愛子(田中麗奈)に、学校での友達づきあいや行事への参加を禁じられ宗教活動を強いられる。父・信二(森山未來)は宗教から距離を置き、遥と妹の祈(根本真陽)に“自分を信じること”の大切さを伝える。そんな信二が突然病に倒れると、それぞれの“信じる”気持ちが揺らぎ始める。
個人的感想・評価
芦田愛菜が主演した『星の子』と重なる作品。
あの事件以降、SNSから広がった信仰に熱心な親を持つ子供の事を呼ぶ『宗教2世』という言葉。
彼らは自分の意志とは関係なく自動的に宗教団体に入信(入会)させられている事が多く、宗教の教えに強く傾倒する毒親を持つ可哀想な子というイメージの使われ方だと思う。
「でも、実際にはそれが全てではない。」ということは、理解しておきたいと思う。小さなことから言うと食事内容や、日々の生活のルールなど…それぞれの家庭にはそれぞれの普通があって、この家族の場合は「母の信仰」が生活に強く根付いているというだけのこと。
このドキュメンタリータッチの作品には、日本における<宗教>に対する答えの出ない問いがいろいろと描かれていた。
例えば、子供の頃から遥たち姉妹は、母の強い信仰心と共に育っているのではたから見れば厳しすぎる教えや、街頭で布教活動に参加することにも他者からの見られ方に気づくまでは なんの疑問も持っていなかったはず。
父の死を目の当たりにして、信仰心が崩れた遥もおかしくないし、窮地に陥っていた時に信仰(や、他の信者たち)に救われた母親が、信仰や神を否定する者を認め難いのもごく自然なのだとも思う。
「宗教=怪しくて怖いカルト団体」という認識が広がってしまっていることが、自由宗教の国:日本ならではの問題なのかもしれない。
けれど、実際に世間を震撼させる犯罪事件を起こした団体や、暴力や搾取によって私腹を肥やす悪者が上層部に存在する凶悪な団体があることも事実で、宗教=怖いと思うこともしょうがないとも言える。
結局、相反する思想に対する答えは一つにはできないのだ。
この作品では、母と姉妹達のその後は描かれていないけれど、信じるものが違ってしまったのだから、もう分かりあえる事はないだろうなと思う。
自分を抑えながら成長した遥は、家出して母と戒律から自由になっても悲しいかな自分の存在意義を見出すことが出来ない。
ある種の自傷行為で信仰を捨てた罪の意識を紛らせていたのだけれど、「信じない私も愛して欲しい」と母親にぶつけた言葉が全てだった。<子供が愛する母に愛されたい>ただそれだけなのだ。
多様性という考えが広がってきた今、宗教は自由だと言うならば、信じる自由を許し、信じない自由も許していけるようになっていきたいと思う。
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