劇場版「スパイの妻」感想:正気とモダンと狂気の渦
劇場版「スパイの妻」の作品情報
放映:2020年 / 114分 / ジャンル: 邦画
原作 / あらすじ
脚本は野原位・濱口竜介と監督黒沢清との共作。太平洋戦争目前の1940年が舞台。NHK BS8Kで放送されたテレビドラマを劇場版として公開しヴェネツィア国際映画祭に出品し銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞。
1940年、神戸で貿易商を営む優作は、赴いた満州で偶然恐ろしい国家機密を知り、正義のため、事の顛末を世に知らしめようとする。
聡子は反逆者と疑われる夫を信じ、スパイの妻と罵られようとも、その身が破滅することも厭わず、ただ愛する夫とともに生きることを心に誓う。太平洋戦争開戦間近の日本で、夫婦の運命は時代の荒波に飲まれていく……。(C)NHK, NHK エンタープライズ, Incline, C&I エンタテインメント
予告動画
個人的感想・評価
この作品はオリジナル脚本だけれど、史実上の出来事を絡めた創作で、まるでノンフィクションを見ているかのような作品だった。
というのも、時代演出や4K映像のクオリティが素晴らしかったのに加えて、メインキャストの蒼井優・高橋一生・東出昌大のまるで時代作品のようなセリフ回しが良かったからだと思う。
時代作品のようなセリフ回しというのは、抑揚を抑えた感じで、現代作品と比較すると棒読みに感じてしまうのだけれど昔の映像作品ってこんな感じなのよね。
登場人物はそれほど多くなくて、主にこの3人の舞台劇のような脚本。太平洋戦争を目前に日本という国全体が狂っていく中、嫌が奥にも正気と狂気を持ち合わせてしまう国民の様が描かれている。
特に聡子役の蒼井優は光っていたと思う。
見た目で言えばモダンな洋装も和装も抜群に似合っていたし、優作(高橋一生)に対する少女のような盲目さと、嫉妬と独占欲みたいな女の怖さの演じ分けが上手いところはさすが。
こういうストレートな時代作品って地味で退屈になりがちだけど、この作品は2時間に満たない時間にいろいろな要素がテンポよく盛り込まれていて、見終わった後に各シーンの余韻が残る。
なるほど。テレビ放送だけで終わらせるのはもったいないというのは納得。
3人はそれぞれ違う方向を向いていたけれど、結局どこにも正義は無かった気がする。優作は最後に裏切ったのか?と言う問いは明かされないままだけれど、聡子を守ったんだろうなと私は思いたい。
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