映画「楽園」感想:村社会で壊れていく様がリアルすぎて怖い
映画「楽園」の作品情報
公開:2019年 / 129分 / ジャンル:邦画
原作 / あらすじ
原作は 吉田修一の短編小説集『 犯罪小説集』(2016年)に収録された「青田Y字路」「万屋善次郎」の2編
ある地方都市で起きた少女失踪事件。
家族と周辺住民に深い影を落とした出来事をきっかけに知り合った孤独な青年・豪士(綾野剛)と、失踪した少女の親友だった紡(杉咲花)。
不幸な生い立ち、過去に受けた心の傷、それぞれの不遇に共感しあうふたり。だが、事件から12年後に再び同じY字の分かれ道で少女が姿を消して、事態は急変する。
一方、その場所にほど近い集落で暮らす善次郎(佐藤浩市)は、亡くした妻の忘れ形見である愛犬と穏やかな日々を過ごしていた。
だが、ある行き違いから周辺住民といさかいとなり、孤立を深める。次第に正気は失われ、誰もが想像もつかなかった事件に発展する。
2つの事件、3つの運命、その陰に隠される真実とは――。
“楽園”を求め、戻ることができない道を進んだ者の運命とは――。(C)2019「楽園」製作委員会
予告動画
映画「楽園」の個人的感想・評価
12年前の少女失踪事件が暗い影を残す長野県の田舎村
余所者(よそもの)を受け入れない閉鎖的な村社会で「生き場」を無くした3人の行末は… という話
紡を通したオリジナル脚本
剛志(綾野剛)の話「青田Y字路」と、善次郎(佐藤浩市)の話「万屋善次郎」は別の短編だけど
紡(杉咲花)の視点を通したオリジナル脚本で
村社会(むらしゃかい)とは、集落に基づいて形成され、有力者を頂点とした序列構造を持ち、余所者を受け入れようとしない古くからの秩序を保った排他的な社会を指す。
村社会にはしきたりがあり、それを破ったものには村八分などの制裁が科せられる。
↑このままの閉鎖的な社会の現実をまじまじと見せつけられる
他者から阻害され続けたり、多者から追い込まれることで個人は簡単に壊れるんだなと思わされる作品だった
暗くて辛くて誰も救われない
登場人物は誰も幸せにならないし、失踪事件の真相も明らかにされないストーリーで後味はかなり悪い
同じ『楽園』っていうタイトルのこの作品もめちゃくちゃ暗かったわ…
悪意のなかったはずの人間がささいな掛け違いをきっかけに排除され凶行に及ぶ様はかなりリアルで怖い
重苦しい話の中で、紡(杉咲花)だけがほんの僅かに希望のある終わり方だったのだけが救いになっている
どうか過去の呪縛から解かれて生きていって欲しい
男性陣の怪演が印象深い
自身の出生のせいで子供の頃から村で受け入れられず自閉症ぎみになった孤独な青年を演じた綾野剛
『閉鎖病棟』で見せた精神を患うチュウサンともまた違う脆さで、このヒトは役への入り方が凄いなといつも思う
他に、まさかの闘病で脱毛する村上虹郎や、紡に怒りの矛先を向けた柄本明もキーマンだったけれど
何と言っても、壊れた佐藤浩市は怪演過ぎて背筋凍った
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