
映画「あん」感想:命を生ききる意味とは何か考えさせられる
映画「あん」2015年公開 (出演:樹木希林,永瀬正敏,内田伽羅ほか 監督:河瀬直美)のレビュー。内容・出演者紹介と個人的感想&評価
映画「あん」をざっくり紹介
前科があることが枷になり上手く生きれない男が、ハンセン病で隔離されながら生きてこざるを得なかった老女と、どらやきの「あん」づくりを通じて心を通わせ「生きる意味とは何か」を教えられる話です。
樹木希林さんの最後の主演作となりました。片手が不自由な老女の役なので、手を縛って生活をして役作りをされたそうです。
- 樹木希林さんの最後の主演映画
- 国家政策で差別された「ハンセン病」患者の一生
- キーワード : ハンセン病(らい病)・生きる意味
同名小説「あん」 作者はドリアン助川
ドリアン助川(助川哲也)さんは、早稲田大学卒業後ロックバンド「叫ぶ詩人の会」を結成。若者の相談を軸とするラジオ番組でも人気パーソナリティーを努め、小説家・ミュージシャンなどジャンルにとらわれないアーティスト。原作 あん (ポプラ文庫)は2013年出版小説。
※ハンセン病とは
1931年(昭和6年頃)に日本で流行した感染病。「らい菌」に感染する事で起こる病気で「らい病」と呼ばれていました。
現在は薬で治り、感染力も強くない病気ですが、栄養事情が良くない当時は感染が広まり、見た目が奇形する病状などのせいで人々から恐れられ、国家政策で療養所が建設され患者は完全隔離されました。
当時の患者は子供が多く、肉親に迷惑が及ばないよう本名や戸籍を捨てた人や、老人となった現在も故郷に帰れず、亡くなった場合には療養所内の納骨堂に納められているという悲しい事実があります。
予告動画
映画「あん」のあらすじ
あることがキッカケで刑務所暮しを経験し、どら焼き屋の雇われ店長として日々を過ごしていた千太郎。
ある日、店で働くことを懇願する老女、徳江が現れ、彼女が作る粒あんの美味しさが評判を呼んで店は繁盛していく。
しかし、徳江がかつてハンセン病を患っていたという噂が流れたことで客足が遠のいてしまい、千太郎は徳江を辞めさせなければならなくなる。
おとなしく店を去った徳江だったが、彼女のことが気にかかる千太郎は、徳江と心を通わせていた近所の女子中学生ワカナとともに、徳江の足跡をたどる。
監督・脚本・公開年データ
監督 / 脚本 | ドリアン助川 / 河瀬直美 |
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公開 | 2015年 |
主要キャスト
吉井徳江(あんの作り方を知る老女) | 樹木希林 |
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千太郎(どら焼き屋の雇われ店長) | 永瀬正敏 |
ワカナ(常連客の中学生) | 内田伽羅 |
佳子(徳江の友人) | 市原悦子 |
どら焼き屋のオーナー | 浅田美代子 |
個人的な感想
恥ずかしながら、ハンセン病と言う病気にこの作品を見て初めて知りました。
体だけでなく、個人の生き方そのものに不自由を強いられながら多くの人が隔離されたことや、堕胎を強いられた事実など・・・。
今も日本でその差別が消えきらずに残っていることにもとても驚きました。悲しい人生の終焉に、あえて社会と交わろうとした元ハンセン病患者の徳江。
病を持ちながらも明るく愛らしい一面があり、樹木希林さんご本人の生き様とシンクロしているようにも感じました。
お亡くなりになった名女優 市原悦子さんも、徳江の友人として出演されていたことがさらに感慨深かったです。
徳江の心の内のように満開の桜が散りゆくラストは印象的なシーンで、悲しいけれど心がほぐれる名作でした。
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