映画「はるヲうるひと」感想:昭和アングラのイビツ
映画「はるヲうるひと」の作品情報
放映:2021年 / 113分 / ジャンル: 邦画
原作 / あらすじ
監督・脚本は俳優の佐藤二朗。原作は佐藤二朗主宰の演劇ユニット「ちからわざ」で2009年に初演した同名舞台劇
とある島。そこは至るところに「置屋」が点在する、いわば売春島。ある置屋にその「三兄妹」はいた。長男の哲雄は店を仕切り、その凶暴凶悪な性格で恐れられている。次男の得太は哲雄にこびへつらい、子分のようにしたがっている。長女のいぶきは、長年の持病を患い床に伏してる。
ここで働く四人の個性的な遊女たちは、哲雄に支配され、得太をバカにして、いぶきに嫉妬していた。女を売る家で唯一女を売らず、それどころか優遇された箱入り娘。しかも、いぶきはだれよりも美しかった。得太はその美しいいぶきを、ただただ見守り寄り添うだけであった。出口のない閉塞感に苛まれつつ、目の前の現実を日々受け入れ、無為に生きる面々。だが、先代で、三兄妹の父・義雄をめぐる「ある秘密」が明らかになり、それぞれの運命を変えていく――。(C)2020「はるヲうるひと」製作委員会
予告動画
個人的感想・評価
山田孝之主演作でウォッチ入りしていたら、佐藤二朗が原作・脚本・監督・出演4役とのことで視聴してみた次第。
置屋 = 違法な売春宿ばかりの架空の売春島 が舞台というだけあって、単刀直入に言うと、95%の人にはオススメできない作品だった。佐藤二朗本人がインタビューで
「監督として僕がグッとくるのは、〝負〟を抱えた人間」と一貫している。
と語っているだけあって、なんていうか底辺で生きる人のジメッとした昭和アングラ感がつきまとう作風。
佐藤二朗は最近司会までやっていて世間では好感度高めなイメージかも知れないけれど、わざわざこんな作品を世に出したってことはこっちが真髄なんだろうなと思った。
舞台が原作らしく、ほとんどのシーンが昭和に取り残されてかび臭さそうな古民家内(長男:哲雄の家庭内だけ令和な演出は面白いなと思った)。
それに加えて、陰湿で露骨な描写が多いので、山田孝之と佐藤二朗のシニカルな笑いのようなものを期待して見てしまった人は冒頭5分位で退場するのでは無いかと思う。
頑張って最後まで見ても、感想を述べるのが難しいんやけど!
それでもこの作品で、佐藤二朗が何を伝えたかったのかを考えてみると、
「なんで島から逃げ出さないんだ?」とか「病弱なアル中ってなんの病気や?」とかそういう細かいことは愚問で、前出の本人の言葉どおり、〝負〟を抱えた人は〝負〟を抱えたままでも、生きるしか無いっしょ…とそういうことかと思う。
置屋で搾取されている遊女たちは、その置かれている状況に対してどこか割り切っていて強く生きているように見えるのに対して、置屋の主側の3兄妹は親の死から精神的な成長も、時間も止まっていて泥濘の中で生きている感じに見えたけれど、
(アイデンティティが崩れ落ちた哲雄だけを除いて)ほんの少し光が見えるラストシーンは救いではあった。
ストーリーは胸糞悪いけれど演技は皆上手くて、超ヘタレ役に徹した山田孝之の憑依的演技力はいつも通り凄かったし、女優陣の振り切った熱演も良かったし、クソ役を一手に背負った佐藤二朗の気持ち悪さも震えた。
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