映画「ファミリア」:無骨な父親の話としてなら…
映画「ファミリア」の作品情報
放映:2023年 / 121分 / ジャンル: 邦画
原作 / あらすじ
脚本はいながききよたか。日本に暮らすブラジル人移民達に視点を当て、実際に起きた事件などを題材にし国籍や文化、境遇を超えて家族を作ろうとする人々の姿を描いたオリジナル脚本。
陶器職人の主人公・誠治と、海外で活躍する誠治の息子・学、そんな父子に助けられる在日ブラジル人青年マルコスの3人を軸に、国籍・文化・境遇の違いを超えて《家族》を作ろうとする人々を描いた感動の物語。
誠治は妻を早くに亡くし、山里で独り暮らし。アルジェリアに赴任中の一人息子の学が、難民出身のナディアと結婚し、彼女を連れて一時帰国した。結婚を機に会社を辞め、焼き物を継ぐと宣言した学に反対する誠治。一方、隣町の団地に住む在日ブラジル人青年のマルコスは半グレに追われたときに助けてくれた誠治に亡き父の面影を重ね、焼き物の仕事に興味を持つ。そんなある日、アルジェリアに戻った学とナディアを悲劇が襲い……。©2022「ファミリア」製作委員会
予告動画
個人的感想・評価
軸になるブラジル人役には、オーディションで選ばれた無名の新人を起用。その他脇を固めるのは、意外と映画作品を見たことがなかった吉沢亮・イクメンマルチロックアーティストMIYAVIに、ベテラン勢に佐藤浩市・松重豊・室井繁など。
そしてハズレのない役所広司主演で、期待値が高めだった。…のやけど、いまひとつ消化不良な感じの作品だった。
誤解なく言えば、今作の役所広司も間違いなかった。一つの作品の中で、悲しみ・喜び・絶望・怒り・優しさといつもの狂気を秘めた人間臭い男像をそつ無く演じていたし、他の俳優陣も役に徹した演技で良かった。
無名とは言えブラジル人達も、日本語と母国語を混在させた台詞回しで、実際の外国人団地(愛知県豊田市にある保見団地)をロケ地にし、その住民達がエキストラ出演していたりと、リアリティも高かったと思う。
じゃあ、何がイマイチやったのかと考えると…テーマを詰め込みすぎた脚本のブラッシュアップ不足なのかなと思う。国を超えた「家族愛」を描いた作品にしては、
- 外国人労働者の差別や搾取
- 異国文化の違いによる隔たり
- 半グレの暗躍と違法ドラッグ
- 国際結婚や難民問題
- 伝統技術職の後継者不足
これに加えて、急に「国際テロ事件」まで差し込まれているわけで…。誠治ら親子の話と、マルコスらブラジル人らの時間軸が同時に進んで、別々の映画を交互に観せられているようだった。
そのためか、個々の人物の背景の描写が薄く「え?なんでそーなる?」とどの登場人物も行動が極端に見え過ぎて感情移入できない。
『ファミリア』というとあのクマさんの子供服メーカーしか思い浮かばないほわんとしたイメージとは程遠く、過激で凄惨なシーンが多すぎて、『ファミリア』の語源の「家来」や「召使い」という方の意味でタイトルをつけたのかと思うほどだった。(ブラジル人カップルの露出の多いラブシーンも不要だったと思う。)
ブラジル人移民を軸にしたテーマは決して悪くなかったと思うので残念。役所広司演じる無骨な父親: 誠司の話として観ればまぁまぁ面白く見れると思う。
ちなみに、クレジットされている松重豊はたったのワンシーンしか出ていない。でも十分怖かったわ。
コメントの公開は管理者の承認制です (は空白不可)