映画「ディア・ドクター」感想。誰も傷つけない嘘なら⋯?
映画「ディア・ドクター」の作品情報
放映:2009年 / 119分 / ジャンル: 邦画
原作 / あらすじ
監督を務める西川美和の過疎の村で慕われた一人の医者を巡る物語を描いたオリジナル脚本。ゆれるに次ぐ3作目の長編作品。
山あいの小さな村。唯一の医師として人々から慕われていたひとりの医師が失踪した。
警察がやってきて捜査が始まるが、驚いたことに村人は、自分たちが唯一の医者として慕ってきたその男について、はっきりした素性を何一つ知らなかった。やがて経歴はおろか出身地さえ曖昧なその医師、伊野の不可解な行動が浮かびあがってくる――。(C)2009『Dear Doctor』製作委員会
予告動画
個人的感想・評価
アマプラで公開が終了する間際の西川美和監督縛り3作目。ゆれると同じく公開当時以来の再視聴だった。
『その嘘は、罪ですか。』この作品につけられたキャッチコピーらしい。
話の中で笑福亭鶴瓶演じるニセ医者・伊野がついたいくつかの嘘は罪か罪じゃないかと言われれば、間違いなく罪でしかもまぁまぁな罰則がある大罪なのは間違いない。
だけど罪が、人や状況によっては都合の良い物になる訳で…この神和田村にとっては伊野は必要悪だったんだろうと思う。
余貴美子演じる看護師はもちろんのこと、村民や関係者も薄々は気づいていたと分かるような描写がたくさんある。それでも無医村よりはずっといいし、人懐こい人柄も相まって、すっかり伊野が村のパーツになっていたと言うところかと思う。
だから『その嘘は、罪ですか。』として見ると意見は割れそうなんだけど、この作品の面白いところは、渦中の伊野が善人でも万能でも極悪人でも無いところだと思う。
医者になりそこねた伊野が、村人への慈悲の一心で医者として振る舞っていたなら美談だけれど、金勘定もちゃっかりしているのでそうでもない。
医師免許が無いだけで医師としての技量はあったかといえば、残念ながら知識も実力も無い。村から逃げ出したのも自己保身の為だろうし、隠密しに行ったのは単純に優しさからだろう。
まぁ、言えば調子の良いただのおっちゃんなのだ。
そんなただのおっちゃんが、条件さえ揃えば皆から好かれ、必要とされる拠り所になり得たところがこの作品の面白いところだと思う。
誰も傷つけていないなら、その嘘はもぅ罪じゃないんだろうか…と考え出すと、うーん悩ましい。
ボンボンのきらきら研修医・相馬(永山瑛太)がさっさと帰り支度始めるところが皮肉すぎた。
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