映画「その日、カレーライスができるまで」感想:晴れた朝に。
映画「その日、カレーライスができるまで」の作品情報
放映:2020年 / 52分 / ジャンル: 邦画
原作 / あらすじ
原作は半沢直樹の脚本家、元お笑い芸人で演出・構成作家の金沢知樹。企画・プロデュースは齊藤工が努めたワンシチュエーションショートムービー。(2021)
どしゃぶりの雨のある日、とあるアパートの一室。くたびれた男が台所に立つ。毎年恒例、三日後の妻の誕生日に食べる特製カレーを仕込んでいるのだ。
愛聴するラジオ番組ではリスナーの「マル秘テクニック」のメール投稿を募集している。
すると男はガラケーを手に取り、コンロでぐつぐつと音をたてる特別な手料理についてメールで綴り始める。その横では、幼くして亡くなった息子の笑顔の写真が父の様子を見守っている…。
日本の一家団欒の象徴ともいえる家庭の味=カレーライスと、電波を通じて誰かと誰かを繋いでくれるラジオが、ひとりの人生、ひとつの家族にもたらすものとは? 誰もが大切な何かを思い出す、あたたかい奇跡の物語。
©2021『その日、カレーライスができるまで』製作委員会
予告動画
個人的感想・評価
- 降り続く雨で停電し、ラジオが流れるだけの暗く古びた台所にひとりたつ初老の男: 健一(リリー・フランキー)。6歳で息子は病死、妻も昨年家を出て行ったが、健一は3日後の妻の誕生日の祝いの為にカレーをつくっているのだ。
- カレーを作る自分を綴った投稿メッセージが初めてラジオ番組に採用された翌日、今度は妻の投稿であるらしいメッセージが採用される・・
上映時間52分、登場する役者はリリー・フランキーたった1人、回想シーンをのぞいて室内のみのワンシチュエーションムービー。
もう地味すぎてショートフィルムとも言い切れず、WOWOWでやってそうな単発ドラマの趣だった。
それもそのはずで、制作時期はコロナ禍ステイホーム真っ只中の国民総自粛期間の中、「(劇場公開予定は無くても)何かを作らなければいけない!」というクリエイター魂で制作されたらしいこの作品。
家族が誰もいなくなった部屋にたった一人、他社とのコミニュケーションは音声のみ、一歩も家から出ないという設定でまるで「当時のステイホーム」を再現したかのようだった。
ストーリーは、くたびれた雰囲気の初老の男が、妻が好きだったラジオ番組を流しながら、出ていった妻の為に未練がましくカレーを作る3日間。
時には鼻歌まじりにごきげんに、時には亡くした息子の思い出のフィルムを見ながら写真に語りかけ涙し、煙草片手に酒を飲み過去の自分を悔いている・・・哀愁とも言い切れないしょぼくれた日常そのままを観せ続ける。
こういう役は、リリー・フランキーがずるいほどハマっている。(💭でも、なぜか この役を志村けんが演じていたら?とイメージしてしまったのはなんでだろ)
煮込み続けたカレーが完成した3日目、降り続いた雨が止んで空は晴れ渡っていた。少しだけ小綺麗に身だしなみを整え、妻かもしれないチャイムの音に見せたリリー・フランキーの可愛らしい表情が全てを持っていったようなエンディング。
あの鬱々とした時期に、止まない雨はないと希望を魅せるような意図のラストシーンだったと思う。
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