映画「閉鎖病棟-それぞれの朝-」感想:抑えた演技が良かった
映画「閉鎖病棟-それぞれの朝-」の作品情報
公開:2019年 / 117分 / ジャンル:邦画
あらすじ
原作は現役の精神科医でもある帚木蓬生の同名小説。映画化は2001年に続いて2度目。
長野県のとある精神科病院。死刑執行が失敗し生きながらえた秀丸。幻聴に悩まされるチュウさん。DVが原因で入院する由紀。
彼らは家族や世間から遠ざけられても、明るく生きようとしていた。
そんな日常を一変させる殺人事件が院内で起こった。
彼らの日常に影を落とす衝撃的な事件はなぜ起きたのか。それでも「今」を生きていく理由とはなにか。法廷で明かされる真実が、こわれそうな人生を夜明けへと導く―――。
予告動画
映画「閉鎖病棟-それぞれの朝-」を観た感想レビュー
過去に3人を殺めた罪で死刑判決が下ったけれど、なんと死に損なってしまった梶木秀丸(笑福亭鶴瓶)は、執行時に脊髄を損傷し内密に外部の病院をたらい回しにされている。
死刑囚である梶木は社会と隔離され一生を過ごすことを余儀なくされているが、精神を病んだ患者たちの中では唯一の(精神的)健常者でもあるため、閉鎖病棟では患者たちに頼られる存在にもなっている。
陶芸をしながら静かに過ごしていた梶木だが、院内で起きたある事件をきっかけに再び人を殺めてしまい・・・という話。
鶴瓶の演技に感服
まず、梶木を演じる笑福亭鶴瓶はどの場面も本当に素晴らしかった。
過去の事件の回想シーンでは、同じ人物かと思えないほど歳の若さを見せ、病棟シーンでは寡黙で穏やかな秀さんとなり、再逮捕後の全てを諦めた抜け殻のような公判シーンでは終始無言ながらも表情だけで心の内を見事に演じていた。
梶木が再び人を殺めるきっかけとなったシーンでも、実際に殺めたシーンでも大げさなセリフは無く、ある意味淡々と描かれているのが余計に印象に残った。
オーラを消した実力派俳優
また、この梶木を慕う二人の病棟患者の綾野剛と小松菜奈も名演だった。
この二人に少しでも華やかさが見えると台無しになるところだけど、それぞれ主演を張れる俳優でありながらも、普段見せるオーラをすっかり封印して社会的弱者を演じきっていた。
少しの希望を残すラスト
社会からはじき出された3人が、互いに優しさを感じあった結果、また梶木は人を殺めてしまったわけで「あぁ、やっぱり罪人は罪人か」と思う一方で、梶木を咎めきれない気持ちを持った。
この作品では梶木の判決について描かれていないけれど、それで良かったと思う。(おそらく、厳しい判決が下ることは間違いないので)
副題の通り、それぞれの生きる希望を感じさせるラストシーンだったので悲しいながらも後味の良い終わり方だった。
久しぶりに名作入りする作品。
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