映画「キャラクター」感想: 作品を通じてシンクロする狂気
映画「キャラクター」の作品情報
公開:2021年 / 125分 / ジャンル:邦画
原作 / あらすじ
原案・脚本は『20世紀少年』の共同原作者でもある長崎尚志で、川村元気と村瀬健で10年以上前から構想を練った完全オリジナル作品
漫画家として売れることを夢見る主人公・山城圭吾(菅田将暉)。
高い画力があるにも関わらず、お人好しすぎる性格ゆえにリアルな悪役キャラクターを描くことができず、万年アシスタント生活を送っていた。
ある日、師匠の依頼で「誰が見ても幸せそうな家」のスケッチに出かける山城。
住宅街の中に不思議な魅力を感じる一軒家を見つけ、ふとしたことから中に足を踏み入れてしまう。
そこで彼が目にしたのは、見るも無残な姿になり果てた4人家族……そして、彼らの前に佇む一人の男。事件の第一発見者となった山城は、警察の取り調べに対して「犯人の顔は見ていない」と嘘をつく。
それどころか、自分だけが知っている犯人を基に殺人鬼の主人公“ダガー”を生み出し、サスペンス漫画「34(さんじゅうし)」を描き始め、漫画は異例の大ヒットをするのだが..
(C)2021 映画「キャラクター」製作委員会
予告動画
個人的感想・評価
Fukaseの異例の俳優起用と、主役級の脇役がかなり早くにまさかの退場(!)してしまったり・・と、いい意味で予想のしにくいストーリーの作品だった
作り出す側の苦悩
『いくら美味い画が描けても、ヒットするわけではない』
これは例えば、歌や小説、絵画や映像にも共通する作り手側の最も苦しい悩みなのではないかと想像できる
この作品の主人公の圭吾もまたしかりで、画力はあって熱心で真面目でも見るものを興奮させる何かが足りないという自分自身の努力ではどうしようもない問題を抱えていて・・
そこで出会ってしまう非現実的な殺人現場と、カリスマ的雰囲気を醸し出す殺人犯の青年
これ以上のリアリティは無い訳で、そこで感じた言い知れぬ恐怖と興奮をなぞる形で世に出した作品は大ヒットしたというわけ
シンクロする両角と圭吾
結婚し、大ヒット漫画家として順風満帆に暮らす圭吾の前に、突如『僕がモデルだよね』と両角が現れることでストーリーが一転する
最初は両角の犯行を圭吾がなぞって作品にしていたのとは逆転し、今度は圭吾の作品を両角がなぞって殺人を実行するようになるのだ
やがて、圭吾が信頼を寄せていた刑事(小栗旬)が殺害され、圭吾の家族(高畑充希)にも危険が迫り、両角と圭吾が対峙する時がこの作品の最も面白いシーンだと思う
この事実が作品内できちんと説明されることは無いのだけれど、
両角に襲いかかる圭吾は、両角の持つ狂気そのものになっている
一見いい人だった圭吾が自分でも気づかずに秘めていた狂気と、新興宗教の犠牲者として両角が持ってしまった狂気が作品を通じてシンクロしていったのではないかと思う
ところでFukaseの演技は、個人的には上手いとは言えなかったけれど普通じゃない人間を演じる役なので違和感は全く無かった
作品の本題とはそれるけど、ラストシーンの裁判所での黒髪すっぴんのFukaseは、いろんな意味で一見の価値有りだと思う
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