映画「蜜蜂と遠雷」感想:優しい音色のピアノ群像劇
映画「蜜蜂と遠雷」の作品情報
放映:2019年 / 118分 / ジャンル: 邦画
原作 / あらすじ
原作は、恩田陸の若きピアニストたちのコンクールに挑む葛藤や成長を描いた同名長編小説『蜜蜂と遠雷』(2016年)。第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞ダブル受賞作。
芳ヶ江国際ピアノコンクールに集まったピアニストたち。復活をかける元神童・亜夜。不屈の努力家・明石。信念の貴公子・マサル。そして、今は亡き“ピアノの神”が遺した異端児・風間塵。
一人の異質な天才の登場により、三人の天才たちの運命が回り始める。
それぞれの想いをかけ、天才たちの戦いの幕が切って落とされる。はたして、音楽の神様に愛されるのは、誰か?(C)2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会
予告動画
個人的感想・評価
それぞれ違った美しい音を奏でる登場人物の群像劇を、言葉で表現するのは匠の技じゃないだろうかと思うんだけれど・・原作は長編小説らしい。しかも本屋大賞を含むダブル受賞をしている評価の高い作品とな。
こういう作品の場合、どうしても映画化するに当たって端折られる部分が多くなったり改変されたりして原作ファンからは厳しい評価になるけれどこの作品も同じくの模様。
とはいえ、原作未読のものからすれば芸術の世界に生きるものの機微をうまくまとめてあったなと思えた。
ピアノや音楽の知識は皆無でカデンツァと言う自作して自由演奏するパートがあることすら知らなかったけれど、それでも個性を感じさせる演奏シーンが取られていたりと音楽も十分楽しめる脚本。
あるコンクールの始まりから終わりまでの中で、4人それぞれの心の移り変わりを描いているのだけれど、主軸となるのは、松岡茉優演じる亜夜が指導者だった母を幼くして亡くしたトラウマを乗り越えられるか・・という話になっている。
それぞれピアノに対して違ったバックボーンを持ち、奏でる音色も全く違う4人の演奏者。コンクールに参加した以上、全員がライバルであるはずだけれど、同時に代え難い同士でもあって仲間の演奏を応援する様子は、まるでフィギュアスケートの競技風景を見ているようにも感じた。
(かつてのオリンピックで観客席から声援をかけていた姿、あれ美しいよね。)
海の底にいた少女のような亜夜の蝶になる瞬間を演じた松岡茉優・ピータパンのような不思議少年: 塵にぴったりだった鈴鹿央士・育ちの良さそうな秀才: マサル役がはまる森崎ウィンと3人のキラキラした若手ピアニストとは対象的に、オーラを消して普通の大人ピアニスト:明石になりきれる憑依型俳優 松坂桃李と・・
決してキャラの濃い人物じゃないのにそれぞれの個性を魅せる演技力はさすがだなぁと思った。
出番はすくないけれどステージマネージャー役平田満の穏やかな演技も印象に残ったし、登場人物が皆優しくて心温まるピアノ群像劇だった。
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