映画「ある男」感想:入れ物を変えるしかない人生
映画「ある男」の作品情報
放映:2022年 / 121分 / ジャンル: 邦画
原作 / あらすじ
原作者は 平野啓一郎。亡くなった夫が別人だったと知った衝撃の真実と、その男の過去を追う同名のヒューマンミステリー小説『ある男』(2018)
劇場版は第46回日本アカデミー賞 最優秀作品賞他8つの最優秀賞を受賞
弁護士の城戸(妻夫木聡)は、かつての依頼者である里枝(安藤サクラ)から、亡くなった夫「大祐」(窪田正孝)の身元調査という奇妙な相談を受ける。
里枝は離婚を経て、子供を連れて故郷に戻り、やがて出会う「大祐」と再婚。そして新たに生まれた子供と4人で幸せな家庭を築いていたが、ある日「大祐」が不慮の事故で命を落としてしまう。悲しみに暮れる中、長年疎遠になっていた大祐の兄・恭一が法要に訪れ、遺影を見ると 「これ、大祐じゃないです」と衝撃の事実を告げる。愛したはずの夫「大祐」は、名前もわからないまったくの別人だったのだ‥‥。「大祐」として生きた「ある男」は、いったい誰だったのか。何故別人として生きていたのか。「ある男」の正体を追い“真実”に近づくにつれて、いつしか城戸の心に別人として生きた男への複雑な思いが生まれていく―――。
予告動画
個人的感想・評価
このところ日本アカデミー賞常連の安藤サクラを挟んで妻夫木聡・窪田正孝が並ぶと、末明るい話ではなさそうやなと思いながら視聴。
そんな想像を裏切って、この作品での安藤サクラはいたって普通の役柄で、序盤は平穏な暮らしぶりで安心するも、あっけなく大祐(窪田正孝)が急死して話は一変する。
ここから登場する 主役の弁護士: 城戸(妻夫木聡)の身辺調査が進むうちに、『死刑囚』と言うワードが出てきて嫌な予感になる。
すでにこの世におらず、かつ身元を詐称していた男の過去を探り辿るうちに、自分がずっと持っていた出自へのコンプレックスと重ね合わせたのか、男の心情に寄り添っていく城戸。
自分に流れる『血』が決して消すことの出来ないものならば、戸籍ロンダリングという方法で『入れ物』を変えてしまえばいい。いや、もうそれしか無かったのだろう。
顔も中身も変わらなくても、名前と出自が変われば別人として生き直せてしまうという事実に驚くと共に、そこまでして捨て去りたい自分の人生というのも悲しいけれど
それでも、別人として生き直した最後の数年は誰に何も遠慮せず幸せを感じれたんやろうなというのが救いだと思う。
人と人が時を紡ぐことに、何者であるかと言うことがどれくらいの価値を持つことなのか?と考えさせられる話だった。
💭映画化で付け加えられた城戸のラストシーンが小気味よくて、この作品の評価を爆上げした気がする。
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